気温はマイナス50℃、凍った牛乳で釘が打てるヤクーツクの魅力を在ロシアの日本人に聞いた
ロシア在住歴15年以上のロシアな旅人さん(@Japanese_in_Rus)がTwitterに投稿した、ヤクーツクの屋外市場の様子を撮影した写真が、投稿から10日あまりで6.8万を超えるいいねを獲得するほど話題になっている。
ロシアな旅人さんは現在モスクワ在住の日本人で、とある日系企業に勤務している。ヤクーツクはロシアに属するサハ共和国の首都で「世界一寒い都市」と言われている場所で、写真はここに観光で訪れた際に撮影したものだそう。
世界一寒いロシアのヤクーツクにある屋外市場は気温−50℃でも通常営業します。❄
見どころは魚を花屋のように立てて陳列したり、牛乳もブロックで販売します。
ヤクーツクでは牛乳で釘が打てますよ。🐄 https://t.co/MJugRb6JCx
— ロシアな旅人 (@Japanese_in_Rus) 2022年1月9日
地面は一面氷張り、魚もカチカチに凍っているので立てて陳列している状態。さらには、牛乳も凍ったブロックの状態で売られている。どれも驚きの光景だ。
投稿された写真を見たTwitterユーザーからは「すさまじいですね」「豆腐の角で頭をぶつけると、本当に死ぬ世界ですね」と寒さにおののくコメントが集まっている。
トゥギャッチ編集部では、ロシアな旅人さんにロシアの生活について詳しい話を聞いてみた。
-50℃の世界でも正常に機能する都市ヤクーツク
観光先にヤクーツクを選んだきっかけは?
ロシアは年末年始の祝日が長く、今回は12月31日から1月9日までの10連休でした。日本へ一時帰国や海外旅行も難しい状態でしたので「どうせならこの機会に日本人があまり訪れないような場所にしよう」と考え、昔から一度は行ってみたいと思っていたヤクーツクへ行くことにしました。
今回の旅は特にノープランでしたが、地元の人のおすすめの見所や地元の料理を聞きながらヤクーツク市内を中心に観光したり現地料理を楽しんだりしました。
極寒のヤクーツクと日本とを比べてみていかがですか
日本は(東京などでは)少し雪が多めに降っただけで交通機関が麻痺したりしますが、ヤクーツクへ行ってみると-50℃だろうと大雪や濃霧になろうと、すべてが正常に機能している点には驚き、感心しました。
生活面や習慣も常識を超えている部分が多いです。例えば土壌は永久凍土であることから、すべての建物が高床式建築になっています。
ロシアのサハ共和国は国土のほとんどが永久凍土です。その為、建物は写真のように高床式になっています。 もし永久凍土の上に直接建ててしまうと生活で発せられる熱で永久凍土が解けて家が傾いちゃうのでお気を付けくださいね。 https://t.co/Sgwv0jFhq2
— ロシアな旅人 (@Japanese_in_Rus) 2022年1月12日また、車のエンジンは秋から春まで掛けっぱなしにするのが普通です。
極寒のロシアのサハ共和国では秋から春まで車のエンジンはつけっぱなしにします。もちろん出先の駐車場でも切らずに用事を済ませます。最近はエンジンオイルの温度が-6℃に下がる度に夜通しでエンジンをON/OFFして保温してくれるシステムを付ける人も多いらしい。 https://t.co/YpSYTr7aZi
— ロシアな旅人 (@Japanese_in_Rus) 2022年1月11日橋のない大河(市内を流れるレナ川)に冬の間だけ全面凍結した氷上に道路が作られたりもします。日本の常識とは別の常識が形成されている点は興味深いものでした。
ロシアのヤクーツクにあるレナ川。この大河は冬になると全面凍結し1月から4月までの期間限定で氷上の道路が開通します。今年は1月5日に開通し、私も車でレナ川を渡ってみました。 20㌧の大型トレーラーも問題無く行き来出来ます。 https://t.co/0R5n4BqLP5
— ロシアな旅人 (@Japanese_in_Rus) 2022年1月9日文化とは周りの環境により形成されるもので、ヤクート人も厳しい自然と真剣に向き合った結果が今の生活文化になっているのだと実感し、人間本来の適応能力の高さも知ることができた旅でした。
凍った肉は「ナイフで削いで生のまま食べる」
凍った食品はどのように解凍し、料理するのでしょうか?
現地では凍った魚や馬肉や鹿肉をナイフで削いで生のまま食べる習慣があります。ロシア語で『ストロガニーナ』(строганина)というシベリアの北方民族の料理として知られています。
ヤクーツク市内のヤクート料理レストランであれば、どこでも新鮮なストロガニーナを食べることができます。
ストロガニーナはどんな味ですか。
私もレストランで地元の川で獲れる淡水魚(チルという名称の魚)や仔馬肉のストロガニーナを食べてみました。
ストロガニーナは塩コショウをお好みで付けるだけのシンプルな味付けで食べます。刺身や馬刺しの文化のある日本人なら、お酒のつまみに食べられる料理だと感じました。
私が一番気に入った食品は馬乳を発酵させた「ブィールパフ」という炭酸飲料です。味は酸味のあるカルピスソーダという感じで飲みやすく、とても気に入りました。
ロシア人も殆ど知らないロシアの超絶美味しい飲み物をご紹介。
それは気温が-70℃にもなるサハ共和国の『ブィールパフ(Быырпах)』という馬乳の発酵飲料です。
現地で試しにと思い買ったのですがこれが美味過ぎました。味は酸味のあるカルピスサワー。今はお土産に1本しか買わなかった事を絶賛後悔中。 https://t.co/xXCScSpxxa
— ロシアな旅人 (@Japanese_in_Rus) 2022年1月12日
ロシアの人がかぶっている帽子は、実際にはどのくらい温かいのでしょうか。
ロシアの帽子でイメージされるのが『ウシャンカ』という折りたたみ式の耳当てがついているタイプかと思います。-15℃くらいまでなら頭を保温したり耳当てをおろして使ったりできて非常に便利です。
ヤクーツクくらいの極寒となるとウシャンカでは首回りが保温できないので、多くの人はニット帽で頭と耳を隠してコートのフードを被っています。
現地の方の服装はさまざまですが、毛皮のコートやトナカイ皮のブーツ(ウンティ)という高価なものを身に着けている方も多く、防寒に限ってはかなりお金をかけている方が多いという印象を受けました。
ロシアな旅人さんが考える、ヤクーツクの魅力を教えてください。
今回の旅で出会った方々は私が日本人と知ると質問攻めにするくらい興味を持ってくれたり、自分たちの文化や習慣についても誇りを持って紹介してくれたのがとても印象的でした。
日本にとってヤクーツクは異世界で行くことのできないところ、と感じられる方も多いかと思います。しかし実際、ヤクーツクはヨーロッパよりも近く、日本と時差もありません。
思い切って行ってみると非日常や新しい価値観を知ることができて一生の思い出になることは間違いありません。海外旅行に慣れた方は次の旅先の候補にヤクーツクを加えてみてはいかがでしょうか。
ヤクーツクの魅力について語ってくれたロシアな旅人さんは「ロシアの生活や魅力を日本の人にも広く知ってもらいたい」という思いから、TwitterやYouTubeチャンネル「ロシアな旅人」を公開している。ロシアの日常に関心がある人はチェックしてみては。