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「コナンたちと一緒に旅行している感覚」を意識

永岡監督が「今回意識してやっていた」と話しながら見せてくれたのはExcelのシートに色分けして書かれたカラーチャート。ストーリーの流れを「昼・夕方・夜」と分けている。

ストーリーと時間の移り変わりを説明した「カラーチャート」。物語が「昼・夕方・夜」の順で構成されている

永岡監督は「時刻の変化を大事にして、映画を見ている人も旅をしている感覚になってもらおうとしました」という。

シンガポール1日目は昼間のシーン、リシと出会ってレオン邸に行くのは夜、シンガポール2日目の空手大会は昼、京極と園子の食事のシーンや怪盗キッドが銃に撃たれたシーンは夕方、最終決戦は夜のシーン…というように、昼・夕方・夜を繰り返してシンガポールでの「3泊4日」を表現した。

「画面が単調にならないようにということを意識しました。ずっと昼間のシーンが続くと画面的な変化がなくてつまらないので、画面の変化があるとお客さんも飽きないかな、というところが狙いのひとつです」(永岡監督)

こうした構成を考えたきっかけは、『から紅の恋歌』を担当した静野孔文監督のアドバイスからだった。

「二時間という長い時間のなかで、だれちゃう時がどうしてもある。そのタイミングをきちんと温度計のようにして図っていたほうがいいんじゃないか」といったアドバイスを受けたことが、カラーチャートを作るきっかけになった」(永岡監督)。

「怪盗キッドは夜のヴァンパイアのイメージ」

予告編で登場している、傷だらけになった怪盗キッドがいるシーンは「夕方」。このシーンは元々シナリオにはなかったが、後から本編に入れることを決めた。永岡監督はここでの怪盗キッドを「ヴァンパイア」のイメージで描いていたという。

「(怪盗キッドは)太陽を求めて、最終的に(死にはしないけど)崩れ落ちていく、というイメージでカットを作った」(永岡監督)

↓怪盗キッドの「夕方」のシーンは開始0:39あたりから

キッドを夕方にした理由は「今回、怪盗キッドは真っ当に頑張るけどレオンにはめられてしまう。真っ当に頑張るシーンは昼間から夕方が多かったので、ミスをして残念な結果になってしまうのは夕方にしたいなと考えた」だそう。

病院の屋上でコナンと怪盗キッドが傷の手当をしているシーンでは「怪盗キッドが月明かりで傷を癒やす」というイメージで作られたという。

「月の光を浴びて直して、元気を取り戻していくというイメージで作らせてもらった」(永岡監督)

山口勝平「今回はまじっく快斗の要素を持ってきていいんじゃないかと」

怪盗キッドの声優、山口勝平さんの演技エピソードも披露された。

本作の怪盗キッドは『まじっく快斗』での素の「黒羽快斗」の表情が出ている。その中で永岡監督が「完全にまじっく快斗だな」と思ったのが、アフレコの時に山口勝平さん(怪盗キッド)が「ヒヒッ」とファニーな笑い方をする2箇所のシーンだったという。

永岡監督が山口勝平さんは「NGと言われるかなと思ったんだけどやっちゃったんだよね」と。でも今回の怪盗キッドは『まじっく快斗』の要素を持ってきてもいいんじゃないか、という山口さんなりの解釈があったという。

諏訪Pと永岡監督は山口さんの解釈について「さすがでしたとしか言いようがない。すごくかっこいい怪盗キッドになった」と口を揃えていた。

「青山先生は乙女心がわかっている」

原作者の青山剛昌先生が本作とどう関わったか、具体的なエピソードも出ていた。例えば本作では「前髪を下ろすと超絶かわいい」と言われている、通称「前髪園子」が登場する。

「前髪園子」がアップになった絵コンテが披露されると、会場からは「かわいい」の声があがった(※残念ながら事情により絵コンテはお見せできません)。

青山先生に許可をとって「前髪園子を出したい」と伝えると「かわいいからいいんじゃない」と受け入れてくださった」(永岡監督)という。

また、園子が京極の額を「ちょん」とするシーンがあるが、ここは青山剛昌先生が絵コンテに「こうしてみたら」と指示を入れたことで、非常にキャラらしい動きが出てきたと永岡監督は振り返る。

「カットを全部直すのではなく、一箇所ちょっとした仕草を直すだけでキャラらしい動きにある。先生が乙女の心を持ってるとしか思えない」(永岡監督)。

今回の脚本は『から紅の恋歌』も担当した作家の大倉崇裕氏。137Pという膨大な量のシナリオがあがってきたという

永岡監督「原作を踏み外さないようにと常に思っていた」

怪盗キッドというキャラが好きだったという永岡監督。

「メインキャラクターたちは原作では出さないような表情をたくさんしていたはず。でも原作を踏み外さないようにしなきゃ、ということは常に考えていました」(永岡監督)

来場者からの質疑応答では「また劇場版コナンを手がけることがあったらやってみたいキャラクターは」と聞かれると、

「怪盗キッドをもう一度やりたい。また次にやれたらうれしいですね」と答えていた永岡監督。

今回の制作秘話からは、原作者と原作、キャラクターへの強いリスペクトがあることを感じられた。本作をもう一度観る時は、あらためて制作者たちの狙いを意識しながら観ると新たな感動があるかもしれない。

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コメント

トゥギャッチ@秋の感謝祭実施中 @togech_jp 2019年6月10日
青山剛昌先生の手が入った絵コンテを見られたのは会場に来た人だけ…眼球の奥に焼き付けておきました。