あの懐かしい「図工室の椅子」が欲しすぎてDIYしてみた

見てすぐに図工室を思い出せる稀有なアイテム
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「図工室の椅子」をDIYする

小学校が好きだ

来世があるなら小学校の床になりたい。児童の上履きに踏まれてキュッキュッと音を奏でたい。石鹸を入れるオレンジ色のネットでも、体育館の暗幕でもいい。

それほどまでに「学校」というノスタルジー溢れる空間を愛している。

僕はこれまでに「給食バット」を通販で購入したり「家庭科のナップザック」を作ったりしてきた。
そして、いま一番欲しいモノ、それが…

「図工室の椅子」だ

めちゃくちゃ欲しい(理科室でも使われていたが、理科室は「水道の威力が思いのほか強い」の印象のほうが強いので、この記事では「図工室の椅子」で統一させていただく)。

なんとか通販で購入できないかと調べてみたところ、その値段の高さに驚いた。

大体1万円前後するのだ。

学校に纏わる用具はとかく値段が張る。それはそのまま「児童の安全」を保障してくれる数字だけど…。

僕は大人だ。多少のケガとか平気だ。なのでもう少し安く済ませたいのも本音。

そうだ。自分でDIYすればいい。それなら幾分か安上がりになる。

っていうか、

大好きな学校の備品を、己の手で産み出す

そんなの、ご褒美ですよ。

➀材料を揃える・組み立て

早速ホームセンターにやってきた。

 

木に関して全くの門外漢だが、今回は「赤松」をチョイス。
事前に調べたところ、軽くてやわらかい赤松はDIY初心者にもオススメの材木らしい。

 

木材のカットはお店の人にやってもらった(完璧な仕上がりにしたいから)。

組み立ては店舗内に併設されている「工作室」を利用。

賃貸のアパートだとノコギリやトンカチを使うのも躊躇する。こういったスペースを使えるのはめちゃくちゃありがたい(どのホームセンターにもあるわけではないので、気になる人は調べてください)。

木工作業も久しぶり

思った通りの角度に釘は刺さらないし、自分で打ったトンカチの音の大きさに自分でビビる。
久方ぶりのこの感覚。正に、図工の授業以来だ。

➁エイジング加工

出来上がった。

嬉じい゛(泣゛)

あぁ、図工室の椅子だ。どこからどう見ても、図工室の椅子だ。自分で組み立てた達成感もあって感動もひとしお。めちゃくちゃ嬉しい。

ただ……

この図工室の椅子

綺麗すぎる

そう。このままでは、ただの「キレイな図工室の椅子」だ。あの頃、僕たちがお世話になった図工室の椅子はコレではない。

図工室の椅子は、歴戦の猛者のように傷だらけで、同時にオルゴールのメロディーのような“優しさ”を纏っていなければいけない。

ということで、ここからはお待ちかね「エイジング加工」をしていく。

※エイジング加工……家具や小物を、あえて「長年使い込んだ」かのように施すこと。アンティーク加工とも呼ばれる

 

ザリザリ…

ガリガリ…

やすりで角を削り、カッターや釘で傷をつけていく。

図工室の椅子に直線は似合わない。図工室の椅子は、歪なほど美しい。

この傷もただの傷ではない。児童によって何十年に渡ってつけられた創痕。人はそれを「歴史」とも呼ぶ。俺はいま、歴史を作っているのだ。

当然、床に削りカスが落ちまくるし、部屋中が木粉で充満する。

我が家がどんどん最悪になっていく。

だが

楽しくて仕方がない

僕はエイジング加工が好きだ。己の手でノスタルジーを生み出せるこの行為が、楽しくて仕方がない。

部屋が木粉だらけ? 知ったことか。物づくりで死ねるなら本望だ(とはいえちゃんとマスクはします)。

叶うことなら死ぬまでこういうことだけやっていたい。人生、最期は「図工室の椅子」に突っ伏しながら死にたいものだ。

次に水性ニスで色を塗っていく(今回は値段を抑えるためにダイソーの塗料を使った)。

まずウォールナット(茶褐色)を下地に薄く塗り、その上にけやき色を重ねていく。ウォールナットでけやきの発色をくすませ、「あの頃の色味」を完全再現するのが狙いだ。

ラストスパート

コンパスで穴を開けていく。別に、穴を開けるならキリでもいい。結果だけを見るなら同じ“穴”なのだから。

だが好きなことだからこそ、過程にも可能な限りのリアリティーを追求したい。

えんぴつで字を書いて……

あえて消す!

鉛筆の芯の成分を、木に馴染ませる。ここまで来ると「祈り」に近い。

どうせ記事用にリサイズされた画素数では、コンパスで開けた穴も、鉛筆のかすれも見えやしない。

だがそれでいい。いや…それが、いい。

「創作は誰を救うのか?」

その答えを突き詰めると、最後は自分自身になる。

創作とは、どこまでいっても己を救うためにあるべきだ!

…そう、願いたい。

だからこそ、最後にひとつまみの「祈り」を込める。

楽しくて仕方がない

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