【原作者コメントあり】「靴下屋」中の人が熱く語る『ファイブスター物語』の靴下やタイツ設定のココがすごすぎる

とても熱いコメントと解説をいただきました
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映画やドラマ、アニメなど創作物における職業や文化、ファッションなどの設定や表現を専門家が見ると、実際とは違うことも多々あるようで、最近でもそうした専門家の指摘がTwitter上で賑わっていた。

そんな中、靴下の企画・製造・販売を行っている「靴下屋」のTwitterアカウント(@Tabio_JP)が、「ファンタジー作品における靴下・タイツの表現はほとんど間違っている」としながらも、ある作品については「つじつま合わせが天才的」と絶賛したツイートが話題になっている。

同アカウントはさらに、「タイツの正しい表現は『ショース』」であること、タイツといえば女性が履くものであるイメージだったが実は男性の着衣から始まったことも解説。Twitterユーザーからは「さすが靴下の専門家」との声も上がり、その様子はTogetterにまとめられている。

靴下屋さんがツイート内で絶賛した作品とは『ファイブスター物語』(以下、FSS)。アニメ雑誌「月刊ニュータイプ」(KADOKAWA)にて1986年より連載中で、単行本は現在16巻まで刊行。劇場版アニメ化もされている名作漫画だ。

靴下屋Twitterアカウントは複数人で運用されており、このツイートを投稿したのは「1号」さん。

普段は自社で販売中の製品PRを中心に投稿しているが、Twitterユーザーの間では以前から「1号」さんは「何かと『FSS』を推してくる」ことでも知られている。

『FSS』がどのように「つじつまを合わせている」のか、1号さんからぜひ聞きたいもの。そこでトゥギャッチ編集部が1号さんに解説をお願いしたところ快く引き受けてくださり、解説を寄稿していただくこととなった。

次から1号さんによる解説文を掲載するので、ぜひ最後まで楽しんで欲しい。


『FSS』を推す理由

私が『FSS』に熱狂してしまった理由は、その素材に関する知識、そしてそれを物語に入れ込む力がずば抜けているからです。

『FSS』は1986年より連載がスタート(※1)しており、ロボット(正確にはMH…モーターヘッド、現在ではGTM…ゴティックメード)の存在は認識していたものの、オタクであった私にとっても「過去のもの」であり、「古いもの」という認識をずっと持っていました。

しかし、2015年頃に何気なく『FSS』1巻を手に取ると「過去のもの」という認識は崩れ去りました。1986年に生み出されたものと思えぬ設定の斬新さ、そして今も連載が続いているエネルギーに圧倒されたのです。

そして、物語に出てくるキャラクターたち、特にファティマ(※2)たちのレッグウェアーの描写の細かさに私は感銘を受けました。

※1…アニメ雑誌『月刊ニュータイプ』にて連載 

※2…作品内に登場する有機的人造人間の呼称。

ファティマ・パルスエット ©EDIT

「圧倒的な素材知識」に感動

まず私が一番感動したのは、圧倒的な素材知識です。ファティマは「天然素材(ナイロンも含む)以外では肌荒れを起こす」という設定です。そんな設定を取り入れた漫画作品を今まで見たことがありませんでした。さらに、設定で「そのために何万年ものあいだ、作る技術が失われていた天然繊維の技術が復活した」という熱の入れよう。

ファティマ・ラ・ベルダ ©EDIT

オタクとして見ると、この設定があると「私たちがよく知っている世界の延長線上に見えて、全く異なる世界である」と認識できるのです。さらに、ファティマという「騎士だけが連れていける、非常にお金のかかる存在」という設定に重みが増すのです。そう、「服の素材」というだけでも!です。

作者は「カラータイツ」の流行を予言していた!?

また、服の描写も素晴らしいです。タイツについて説明すると、例えば1998年に刊行された『FSS』9巻のカラービジュアルにおいて、キャラクター達のタイツは既に「カラータイツ」。これはとても「早い」です。

なぜなら靴下屋がカラータイツを取り揃えて「第一次カラータイツブーム」を生み出したのは1999年頃。つまり、作者の永野護先生は靴下販売が本業の会社よりブームを先取りしていたのです。

果たしてどこにヒントがあったのかは定かではありませんが、永野先生はカラータイツの登場を予言していたと言っても過言ではないと思っています。

また、『FFS』13巻のカラーページではタイツとシースルーソックスの組み合わせ、そしてほぼ同時期に弊社も提唱し始めた「ニュアンスカラー(やや燻んだ色)」を非常に多くのキャラのファッションに取り入れています。

また、剣聖・慧茄(えな)の足元を注目すると「ほぼ肌と同色だが、やや燻んだ色をパンプスと合わせる」という非常に上級なテクニックを行なっています。

永野先生のデザインは、どうしても「奇抜さ(ハイファッション)」なところに目を奪われてしまいがちですが、細部に非常に深いファッションに対しての理解と、予見が含まれています。

なお、登場人物のひとり、ブラウ・フィルモア女王がベージュタイツをストッキングがわりに着用していますが、このテクニックは去年(2021年)から今年にかけて流行ろうとしています。

ブラウ・フィルモア女王 ©EDIT

永野先生のデザインを見るたびに、その「未来感」に感嘆してしまいます。もはや預言者です。


1号さんはTwitterでの投稿が注目された直後のタイミングで、noteに「個人的に、ここがすごいよFSS」という記事を公開しているので、興味のある人はこちらも合わせて読んで欲しい。

……ここで、1号さんの寄稿を読んだ、あの方からの「ひとことコメント」をご紹介したい。あの方とは…そう、原作者の永野護先生だ。

今回の記事を公開するにあたって、トゥギャッチ編集部が諸々の確認と許可を取るために問い合わせたところ「永野護先生からの監修」をいただけることとなったのだ。

ここに全文を掲載しよう。

次ページ:原作者から『靴下屋さんへコメント』

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書いた人
トゥギャッチ編集部

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