亡くなった父が30年以上研究してきた100冊近くの「貸本漫画」を発見、対応に悩んだ家族の呼びかけから寄贈の道へ
Twitterユーザーのあお(@chibak77)さんが「拡散希望」と投稿したツイートが注目されている。山積みとなっている本は「貸本漫画」の数々で、11月に70歳で亡くなられた、あおさんのお父様(享年70)が研究のために所有していたものだという。
【拡散-ご協力頂ければ幸いです。】先日、父が病気で亡くなりましたが、30年以上かけて調査・研究をしてきました「貸本漫画(貸本マンガ)」が発見されました。年内に賃貸を退去するため、中古ですが、趣味の皆さまや研究されている皆さまがもしいらっしゃれば、連絡頂ければお分けしたいと思いますが… https://t.co/cbhKKhioHg
— あお (@chibak77) 2021年11月30日
※現在は募集していません。
「貸本漫画」とは、昭和30年代頃から存在した、本を貸しだす「貸本屋」向けに制作されていた漫画本のこと。赤塚不二夫、楳図かずお、さいとう・たかを、白土三平などといった、今となってはレジュエンド級の漫画家たちも執筆していた。戦後日本のカルチャーとしてコレクションや研究をする人もおり、あおさんのお父様もそのひとりだった。
大量の貸本漫画を前に、さまざまな事情から対処に悩んだあおさんがTwitterで呼びかけると、Twitterユーザーからは多数のアドバイスが集まってきた。その時の様子はTogetterにまとめられている。
これほどの数の貸本漫画を所有していたあおさんのお父様に関することや、集まったアドバイスから決定した処遇についてあおさんに直接伺ってみた。
古武道研究者で貸本漫画も研究していた
全体で何冊ほど所有されていたのでしょうか。
現在、発見されたものは約100冊ですが、かつてはもっと所蔵していたと思います。
あおさんはこれらのコレクションについてご存知だったのですか。
子どもの頃に住んでいた家にあった父の書斎は、研究を記した大学ノートや封筒に入った書類だらけでした。
そこに遊びに入ったときに、紐できれいに束ねて保管してあった漫画本を見つけて、不思議な気持ちになったものです。場所を変えてまだ残っていたんだなとしみじみ思いました。
お父様はどのような研究活動をされていたのでしょうか。
父は中学生の頃から、全国各地の剣術家の活躍や日本の古武道の流派の誕生から発展を研究調査していました。近年では古武道研究の講演をしたり、地域の郷土博物館で企画展が開催されたりと細々ながら今までの活動の成果が実を結んでいたようです。
著作は『野田剣術古武道史』『幸手剣術古武道史』『戸田剣術古武道史』などがあります。
これらの本は今後どうされるのでしょうか。
現在、3カ所の博物館から引き合いが来ております。また漫画とは別に、作品研究をした資料集を制作していて、地元の千葉県野田市の博物館で活用していただくことになっています。
あおさんは自身のツイートにアドバイスを寄せてくれた人たちについて「とても大きな反響があって、大変驚き、感謝しています」とも話している。
正式に寄贈が完了するまではまだ少し時間がかかるそう。それにしても貴重な貸本漫画の数々が、これからは博物館で保管されることになった。行方が気になっていた皆さんも、そして何より所有者だったお父様もホッとしたことだろう。