妊活中の夫婦あるあるエピソードに共感!漫画『男性不妊戯画』作者の医師が語る「男性に寄り添って啓蒙したい」

悩める人たちに届いて欲しい、カエルとウサギの話です
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「妻や自分のため」と理解していても…

「男性不妊」にフォーカスした漫画を作った思いをあらためてお聞かせください。

私自身も生殖補助医療の助けを得て子宝に恵まれましたが、女性が多く来院しているART(※)クリニックに男性が一人紛れて受診していることの居心地の悪さ, 採精(マスターベーションによって精子を回収し検査すること)に対しての心理的抵抗、 所見が悪い際に自身が否定されるような感覚などを味わい、妻のため・自分のためとは理解していても納得しきれない部分がありました。

この経験がきっかけで、私は男性不妊の基礎研究を専攻し、 博士号を取得しました。また、臨床においても男性不妊をライフテーマにすることとなりました。 多くの男性不妊患者はこのような経験を他人に話せず一人で抱え込んでいるので、 このような背景も継続的な通院・治療の障壁となっていると考えています。

※ART…高度生殖補助技術(assisted reproductive technology: ART)

男性不妊への理解を深め受診のハードルを下げるには、正しい情報を男性に知ってもらい、男性側に寄り添った啓蒙活動が必要と確信しています。

しかし、 世間に溢れる「妊活」情報の多くは女性側に立ったものが多く、 パートナーから入る情報には若干のバイアスがあります。また、公的機関等が用意している情報は堅苦しく、個人でネット検索で情報収集しても信頼できる情報かの判断は難しいです。

そこで「触れやすい媒体を用いて、 触れやすい形で啓蒙する」ため、漫画等を使い男性不妊についての情報を啓蒙していくことを考えました。

資料を読んだカエル夫は資料を破いてしまう。プライドを傷つけられた気持ちになるのは、男女とも同じなのだ

「あなたのプライドや気持ちもわかる」というスタンスで描けた

漫画に対し、男女ともに多くの方から好意的な反響がありました。

(前述したとおり)巷で販売・配布されている資料は女性側に立った物や堅苦しいものが多く、男性にとっては「刺さらない」です。中にはこれでもかとダメ夫のエピソードが描かれたものもあります。そんなもの読まされて改心し、外来に行く男なんてそうそういません。なぜなら、僕を含めてダメなんですから(笑)。

自分自身が立派な人間ではないので、「あなたのプライドや、気持ちもわかる。でもまあちょっと協力しましょうよ。」というスタンスで描けたことがよかったのかと思います。

また、漫画としてある程度ニヤリとする内容でないと読み進めていただけないのも自分の経験で分かっていたので、パロディ(ジョジョ・昔話・水曜どうでしょう、など)を混ぜ、面白くしました。ですので、男性・女性、双方に評価をいただけたのだと思っています。ダーヤマ(@TopeconHeroes)さんという協力的なデザイナーさんに出会えたのも大きかったと思っています。

サルの医師が見覚えのある効果音とともに語る

続編希望の声もありますが、続きがあるとしたらどんな要素が入りそうでしょうか。

正直私としては出し切った感があるのですが、続きの希望がそれなりにあって驚いています。

このネタは意外と時間をかけて(1年ほど)練って、男女双方から意見を頂いて修正を繰り返しているので、すぐ次の作品を創るのは難しいでしょう。

ただ、男性不妊の知識を深めて正しい医療情報を得ていただくといったことは必要ですので、医療情報を含めた資料の作成は水面下で行っています。

本マンガの巻末に資料を追加するような形で提供(し、次の作品までの時間稼ぎをする)を考えていますので、ご期待ください。新規のネタを作るのであれば、各治療(タイミング療法、体外受精など)に紐づけてエピソードを作成することを検討しています。

『男性不妊戯画』は冊子版もあり、患者さんへの配布などを検討している医療関係者に限り無償で配布しているそう。関心のある医療関係者の方はサラリ医マンさんのTwitterにコンタクトを取ってみて欲しい。

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