駅ホームに設置され話題になった「エキマトペ」情報と感覚を共有できるバリアフリーの未来が見えた

「音が見える」という面白さが多くの人の助けになりそう
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2021年9月13日から15日まで、JR山手線・巣鴨駅の構内に実証実験として一風変わった装置が設置されていた。電車がホームに入る音、発車を知らせる音、アナウンス…駅で聴こえるあらゆる環境音をAI分析し、ディスプレイに手話動画を表示する他、文字をオノマトペ化してアニメーションで表示する「エキマトペ」という装置だ。

「エキマトペ」プロジェクトは富士通株式会社、東日本旅客鉄道株式会社、大日本印刷株式会社の3社によるもの。川崎市立聾学校(神奈川県川崎市)の生徒たちと一緒にアイデアを考えながら作り上げたという。

デザインと手書き文字アニメーションを担当した、デザイナーの方角方山(@denkiry)さんの投稿から、どのように動くものなのかを見てみよう。

電車がホームに入る瞬間の「ヒュウウウウウウ」という音が「表示」される
「黄色い点字ブロックまでお下がりください」のアナウンスは手話で
発車を知らせるメロディは「ポロポロ」
電車が止まる「キュー!!!」漫画の効果音のようだ

電車がホームに入ってくる音、ブレーキ音、手話によるアナウンスまでがリアルタイムで視覚化されている。思わず見続けて電車に乗るのを忘れてしまいそうだ。

エキマトペの設置期間はわずか3日だったがTwitterにはエキマトペが動作する様子が多数投稿され、聴覚障害のある家族が興味を持ったという声や「今や電車の音はガタンゴトンではなく『ヒューン』だ」「漫画っぽく視覚化されてて面白い」と、あらゆる人たちが楽しく見ていたという感想が集まった。
これらの感想はTogetterにまとめられている。

トゥギャッチ編集部ではプロジェクトに関わった富士通の本多達也さんに詳しい話を聞いてみた。

テクノロジーや障害を意識するきっかけを作れたら

「エキマトペ」のプロジェクトを始めた経緯は。

聾学校には、電車通学する生徒が多くいます。そこで、その通学体験をより豊かなものにできないかと考え、共生社会イベントで出会った富士通・JR東日本・大日本印刷(DNP)の3社が力を合わせて、聾学校の子供たちと一緒に未来の通学をデザインすることにしました。

川崎市立聾学校の生徒さんたちと一緒にアイデアを考えたそうですね。

生徒さんたちからは、駅の音声を文字や手話にしてほしいといった、聴覚情報を視覚情報として表示するアイデアが多く出ました。また、混雑状況を数値で可視化することや、ドアからスロープが出てくるなど、より安心安全な駅体験を望む声をいただきました。

設置期間を終えて、あらためてご感想をお聞かせください。

聾学校の生徒さんが出してくれたアイデアをアイデアで終わらせるのではなく、実際にプロトタイプを作成し、たった2か月という間に、駅に試行設置するところまでを実施できたことが一つの大きな収穫でした。SNSでも大きな反響をいただき「エキマトペ」の大切さを実感することができました。

聾学校の生徒からは「自分たちが考えたアイデアを実現してくれて、本当にありがとうございました」と感謝の言葉をもらうことができました。さらに、健聴者の方々からも「面白い」「ずっと見ていられる」などの声を数多くいただきました。エキマトペを通して、テクノロジーや障害について意識をするきっかけを作れたら幸いです。

耳が聞こえづらい人にとって、頼りになるのは電光掲示板や案内板といった視覚情報のみで、緊急事態が起これば伝達は遅れがちになる。あらゆる人々に必要な情報が届き、感覚をも共有できる「エキマトペ」が、これからひとつでも多くの駅に設置されることを期待したい。

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