2021年7月19日

体験した怖い話を100円で買い取る店で注目 怪談師・宇津呂鹿太郎さんインタビュー

プロ怪談師の数奇な人生を根掘り葉掘り聞いてみました
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「あなたの怖い体験 不思議な体験を100円で買います」

『怪談売買所』という怪しげな出店が、Twitterで話題になっている。その名の通り、プロの怪談師に自身の持つ怪談を聞かせて買い取ってもらったり、逆に怪談を買ってその場で聞くことができるお店だ。

仕掛け人は怪談作家の宇津呂鹿太郎さん(@shikataroutsuro)。この屋台は今年で8年目で、怪談売買所で聞いた話をまとめた書籍も出版している。

宇津呂さんはどんな経緯でこのユニークな試みを思いついたのか。怪談のプロになるまでにどんな道を歩んできたのか。

あまり知る機会のない怪談師の舞台裏について、お話をうかがった。

怪談コンテストのために仕事を辞めた

どのような経緯で怪談のプロになったのでしょうか?

70年代の心霊ブームに幼少期を過ごしたこともあり、怪談・妖怪など怖いもの・不思議なもの全般が好きでした。その頃から人と話す機会があれば「何か怖い話ないですか」と怪談を集めていましたね。

怪談が仕事に変わったきっかけは、20代後半の時に、本当にあった怖い話や体験談を募集するコンテストに参加したことでした。

第1回は、いわゆるブラック企業に勤めていたこともあり、仕事が忙しくて参加できませんでした。翌年に第2回が催され、「ここで参加しないと人生後悔するな」ということで、思い切って仕事を辞めました。

コンテストは複数応募が可能だったので、応募期間の3か月、これまで集めてきた怪談を文章に書き起こし、どんどん応募していきました。

結果コンテストで第4位に入選し、応募された話の中から傑作選をまとめた書籍に私の怪談が掲載され、印税も入りました。これまで趣味で続けていたことが形になったことをきっかけに、意識が変わりました。

ちょうど実話怪談ブームと重なり、出版業界を中心に新しい怪談の書き手が求められた時期でもあったので、「私もプロになりたい」と思ったのです。

怪談のプロになるにあたり、不安はなかったのでしょうか

コンテストが終わったあとも、怪談中心の人生にシフトすることに決めました。今は融通の利く仕事をしながら怪談のプロとして活動しています。

怪談ライブの様子

本の印税やライブによる収入もありますが、将来の保証がどこにもないので、もちろん不安もあります。ただ、人生だれもが80年と言われる時代にどう生きるかと考えたとき、生活のために興味があるわけでもない仕事を続けるのは、私は嫌だと思いました。

怪談というこんなに好きなことがあって、それでお金も頂ける形にできるのであれば、そこを大事にしていきたですね。

「誰も来ないだろう」と始めた怪談売買所

怪談売買所を始めたきっかけを教えてください

私が集めている怪談は、不思議な体験をした人から聞いた実話を元にしています。それゆえに、実際に人に取材した数がモノを言う世界です。効率的に怪談を集めるために、怪談を売買できる店があったらいいなというアイデアは前からありました。

そんな時、縁あって尼崎の三和市場で開催された屋台村のイベントにて、「ブースを出してみませんか」と誘われました。屋台は一畳ほどのスペースで、怪談ライブをやるのは難しい。ならば、怪談売買所をやってみようかということで、アイデアを実現しました。

怪談売買所を始めてみた手ごたえはいかがでしたか

「こんなお店誰も来ないだろうな」となかば投げやりなテンションで始めたのですが、まったく予想外の数の人が来てくれました。

しかも、面白い話をしてくれる人がたくさんいます。結果的に、怪談売買所を始めて最初の1年で聞いた話をまとめた書籍を出すことができました。

わざわざ怪談売買所に足を運んでくださっている時点で、本人の中で誰かに話すに足るボリュームの話をふるいにかけてくれているのかもしれません。これはいいぞ!と思いましたね。

怪談売買所を初めて出店した三和市場

怪談を集める中で、特に印象に残っているエピソードはありますか

1回目の怪談売買所で、20代半ばくらいの女性がいらっしゃって、(当時から数えて)10年ほど前に住んでいた一戸建ての家でいろんな怪奇現象が起きたことを話してくれました。

ご家族は妹、父母の4人暮らし。ご本人と妹さん、お母様は同じような現象を体験しているのですが、不思議なことにお父様は全くそんな体験していないとのことでした。

また別の機会の怪談売買所で、50代くらいの男性がやってきて、10年ほど前に住んでいた家でいろんなことがあったことを話してくれました。

それが先に出た女性が話してくれた内容とよく似ていて。聞けばなんと、彼がその女性のお父様だったのです。お二人の間では怪談売買所の話をしておらず、まったく偶然に違うタイミングで訪れたんだそうです。

彼に「娘さんはお父さんだけ怪奇現象を体験してないと言ってましたが…」と質問してみたところ、「そらもう、家族に怖い思いをしたなんて恥ずかしくて言えへん!」と返ってきました。

同じ場所で同じような怪奇現象に出会っていても、体験する人によって視点や受け取り方が違うことが分かります。怪異そのものだけではなく、それを体験する人の人間模様が現れており、面白い例だなと思いましたね。

ちなみにこちらの話は、怪談売買録 死季(竹書房)に収録されている。

話の舞台となった家は、兵庫県の川沿いに並んだ新興住宅の一軒で、阪神大震災の折に周りの建物が倒壊する中、そこだけ被害を免れた建物だったそう。いったいどんな怪奇現象が起きたのか、詳細が気になった方は読んでみて欲しい。

次ページ:怪談師の現場で起きたゾッとする体験

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