全盲の日常と盲導犬との暮らしツイートで注目 浅井純子さんインタビュー

精力的な発信・新しい挑戦に取り組む背景にどんな想いがあるのか聞きました
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「神社の場所を見失ったけど、ベビーカステラ屋台の匂いに助けられた」

「回転寿司はメニューの区別がつかず、ロシアンルーレット状態に」

全盲の浅井純子さん(@nofkOzrKtKUViTE)は、全盲の人が体験している盲導犬との日常をTwitterで発信し、たびたび大きな反響を呼んでいます。

撮影協力:オオツキwayタイジ

浅井さんが見ている世界をもっと知りたい!と思ったトゥギャッチ編集部は、生活を発信するようになったきっかけや、SNSでの発信にかける想いをインタビューしました。

「全盲の日常を知りたい人なんているのかな?」と思っていた


浅井さんは30歳までは健常者として生活していましたが「角膜免疫異常」という病が原因で2019年に完全に視力を失い、全盲になりました。

あんま・指圧・マッサージ師の国家資格を取り、現在はマツオインターナショナル株式会社のヘルスキーパーとして勤務しながら、小学校での盲導犬のゲストティーチャーを務めたり、YouTubeで全盲の暮らしを伝える動画を配信したりするなど精力的に活動しています。


ーーーヴィヴィッドくんとの生活をTwitterで発信しようと思ったきっかけを教えてください

浅井:もともと盲導犬との生活を知ってもらう動画コンテンツを制作するため、クラウドファンディングを行っていました。想像以上に反響があり、応援してくれる人の多さに気付いた一方で、YouTubeの活動をもっと広く知ってもらわなければ、という課題感もありました。

そんな中で、ある方から「浅井さんが話す全盲の方の日常は面白いから、Twitterで発信してみては」と勧められました。

自分にとっては当たり前のことを話していたつもりだったので、最初は本当にそんな情報を知りたい人がいるのかな?と思ったのですが「みんな知らんから!」と後押しされ、本格的に発信するようになりました。

ーーー反響を呼ぶきっかけになったツイートについて教えて下さい

浅井:最初に反響があったのが、電車とホームの隙間に落ちた話です。日常のツイートと同じ感覚で「全盲の人はこんな隙間にも落ちるんだよ」とライトに書いてみました。

「もっと発信してください!」「(全盲の方の世界を)学ばせてくれてありがとう」というコメントも多く、こんなに全盲の暮らしに興味を持っていただけるんだ!と驚きました。

ーーーSNSでの情報のキャッチや発信は、どのような方法で実現しているのでしょうか

浅井:情報のキャッチは、iPhoneのボイスオーバー機能(画面の文字を音声で読み上げる機能)を使って行っています。写真・イラストは読み上げてくれないのですが、文字の情報はほとんど全部読むことができます。特にTwitterは短い文章が中心なので、私自身もアクセスしやすいSNSですね。

ただ、反応についても上から順番に読み上げるという形なので、すべてのコメントを読んだり、返信することがなかなか難しいことが申し訳ない部分ではあります。

ボイスオーバー機能でツイートしている様子

発信は音声入力でやっています。たまに変換ミスの誤植があるので、読んでくださる人が増えた今は、一文字ずつ読み上げるモードで漢字などの間違いがないかチェックしてから投稿するようにしています。多くのひと目に触れるということで、特に慎重に行っていますね。

一般の人は全盲の生活を知る機会が少ないことに気づいた

ーーーTwitterで発信した情報がたびたび反響を呼んでいることへの感想を教えてください

浅井:私は「皆さんがもっと全盲の生活を知ってくれたらいいのに!」と思ってきましたが、逆に皆さんは全盲の生活を知る機会がそんなに多くないんだと気づきました。どこで知ればいいかわからないし、「全盲の方にどこまで話を聞いていいのか?」と思う部分もあると思います。

知りたい人がたくさんいるのであれば、視覚障害者として困っていることを発信しつつ、理解を深めて共存していこうと思いました。

Twitterでフォロワーを増やすことで、盲導犬に興味を持っていただく機会が増えることが一番大きいですね。

ーーー視覚障害者の方や、盲導犬との暮らしについて、特にまだ多くの人に知られていないなと感じるポイントを教えてください

浅井:一番は、お店などで盲導犬の同伴を断られるケースがいまだに多いことですね。

実は身体障害者補助犬法という法律で、公共施設を始め、飲食店、宿泊施設、病院などで補助犬(盲導犬・介助犬・聴導犬の総称)の受け入れが義務付けられれています。このことがまだ広く知られておらず、同伴を受け入れてもらえないケースが多々あるのです。

補助犬の利用者は、サービスの利用先で衛生上の問題が起きないように、最新の注意を払ってケアしています。お店に迷惑がかからないようにしつけをすることはもちろん、ブラッシングやニオイのケアも万全です。

盲導犬のお店での過ごし方はあまり知られていない

一方で「法律で定められているから!拒否しないで!」と一方的に訴えるばかりでは、やはりうまく伝わりにくい部分もあります。

障害者と補助犬と社会はしっかり共存していかなければならない、と思っているので、こういった情報がまだ広く知られていないという現実がある以上、補助犬のユーザー側からもしっかり発信していかなければと感じています。

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