官能小説で見た「パンティの中はお祭り騒ぎ」の一言にうつから救われ、やがて作家になった男の話
鬱々とした毎日を送っていた男が、ある日偶然手に取った官能小説の、バカげたフレーズに救われた。
そこから男は物語を書き始め、小説家になった。
そんなフィクションみたいな実体験談がTwitterで注目されている。
むかし鬱をこじらせていたとき、本屋をフラフラ歩いていると、ふと官能小説が目に入ったんです。『そういえば官能小説って読んだことないな』と思って手に取ってパッと開いたら“パンティの中はお祭り騒ぎ”ってフレーズがあったんですよね。おれはそれを見た瞬間、マジで“救われた”って思いました
— 山塚リキマル (@rikimaru1990) 2021年1月18日
物語の主人公は、小説家・作詞家・ダンサーなど多彩な領域で活躍する山塚リキマル(@rikimaru1990)さん。
トゥギャッチ編集部は山塚さんにインタビューし、「パンティの中はお祭り騒ぎ」から始まった胸熱なエピソードに迫った。
「パンティの中はお祭り騒ぎ」が唯一スッと入ってきた言葉だった
ーー「パンティの中はお祭り騒ぎ」に出会う前、山塚さんに何があったのですか
山塚:父と友人が重い病気にかかり、さらにその時将来のことや、仕事、人間関係で上手く行かなかいことがあったり。悪いことが連続して起きて、メンタルの調子が良くありませんでした。
それまで人生の中で重たい出来事を経験したことがなく平々凡々と暮らしていたので、初めて一番塞いでいた時期だったと思います。
ーー官能小説を手に取った時の話を聞かせてください
山塚:ふらっと入った大型書店で、特に目的もなく、店内を散歩のようにまわっていた時の出来事でした。
劇画タッチの表紙の官能小説が目にとまり、何とはなしに開いてみた瞬間「パンティの中はお祭り騒ぎ」を見つけたのです。
私はもともと音楽が好きなのですが、当時は本当に落ち込んでいたので、音楽を聴いても気持ちがアガらず、本を読んでも意味としては理解できるけど頭に入ってこない、という感じの日々を送っていました。
そんな中、「パンティの中はお祭り騒ぎ」だけが唯一スッと心に入ってきた言葉だったのです。
「パンティの中はお祭り騒ぎ」って、くだらなさが度を越しているじゃないですか(笑)。力技で、見た瞬間にもう笑っちゃって。事故に出逢ったみたいな衝撃でしたね。
含蓄のある名言や、ライフハック的な言葉だったらここまで刺さらなかったと思います。
ーー本のタイトルや詳細は覚えていますか?
山塚:実はまったく覚えてないんです。
「パンティの中はお祭り騒ぎ」の一文だけ見て納得してしまって、本を閉じたんですよ。他のページを読もうとか、その本を買おうという気持ちもなく。
変な話ですが、今となってはその本が実在したかどうかも怪しいくらいなのです。でも、私の中では確かに存在しています。
ーー官能小説に出会った後、山塚さんの生活にどんな変化が起きましたか?
山塚:それ以来、本屋に良く行くようになりましたね。
気持ちが落ちていたり、クサクサしている時に本屋に行ったら「何かいいことあるんじゃないか」って気持ちになって。
なにより気分転換になりますし、「パンティの中はお祭り騒ぎ」の時のように、自分が想定しない方向からの弾が飛んできて気持ちが上向いたりすることもありました。これが一番大きな変化でしたね。
山塚さんの人生を変えるきっかけになった出来事もまた、本屋で起きたという。
ーー小説を書き始めた経緯を教えてください
山塚:ある日、本屋で新人賞の公募ポスターをみつけました。ポスターには「大賞300万円」とありました。
それまで小説を書いたことがなく、読書家といえるほどたくさん本を読んでいた訳でもないのに、なぜか「俺が小説書いたら300万円取れるんじゃないか」って思ったんですよ。
そこから10万字のライトノベルを書いて新人賞に応募しました。結果は2次選考止まりでしたが、「小説書くのって楽しいな」と思いましたね。
賞にむけて、計画的に物語を書き始めたきっかけになりました。
そこから山塚さんは賞への応募を続け、回数を重ねるごとに選考の通過数を着実に更新していった。
2018年の「第1回ジャンプ恋愛小説大賞」でついに銅賞を獲得。小説家としてのキャリアを本格的にスタートした。
「パンティの中はお祭り騒ぎ」が山塚さんの生活に変化を起こし、新しい人生の扉を開いたのだ!