劇場版『鬼滅の刃』を観るため映画館まで100km歩いてみた 「無限ハイク」レポート

『鬼滅の刃』公式グッズ縛りのハイキングにチャレンジしました
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2日目はあいにくの雨

10月17日、午前6時30分。2日目の始まりだ。しっかり休息を取ったので、体調は万全、足の疲れもほとんど残っていない。行ける!

強い子のポーズ

出発の前に、一つ告白させてほしい。実は、ホテルの朝食を食べた。体調管理のために、スタートで十分に栄養を摂りたかったのだ。朝食バイキングは鬼滅の公式グッズではないが「藤の花の家紋の家」での補給的な措置として大目に見ていただきたい。それでは無限ハイク再開。

天気はあいにくの雨天で、初日よりも過酷な旅が予想される。1日目は全体の3分の1程しか進まなかったので、気合を入れて頑張りたいところだ。

静寂に包まれた田んぼ道

国道沿いの大通りを抜けると、広大な田んぼ道に入った。

早朝ということもあり、人の気配はなく、聞こえるのは自分の呼吸と、傘に雨粒がパラパラと当たる音だけ。あまりに静かで、歩いてるだけで透明な世界に入れそうな気分だ。

この道は東京につながっている

 

田んぼ道を抜けて、再び大きな道路に出た。ここで道路の標識に「東京」の文字を発見!まだはるか先とはいえ、「この道は確かに東京に続いている」という事実が、気持ちを奮い立たせてくれた。

出発から2時間後、歩道橋の下に雨宿りできそうなスペースを見つけた。ここで最初の休憩を取ろう。雨をよけることができる場所は限られているので、休める時にしっかり休むのが吉だ。

さて、ここから先はひたすら地道な行脚が続くので、サクサク進む。なんつったって新宿まであと70km以上あるのだ。

二つ合わせるとカフェでご飯食べてる感がある

歩き始めて3時間、2日目の最初の補給は「煉獄杏寿郎のジャンバラヤおにぎり」とダイドーブレンドコーヒーオリジナル。スパイシーなおにぎりと、甘さ控えめのコーヒーが不思議なほどよく合う。

5時間歩いたところで公園を見つけたので、2度目の休憩を取る。雨宿りできるだけでなく、座れる場所にめぐり会えるとは。ここが現世の天国である。

足を支えてくれている甘露寺様のくつ下も干す

無限利根リバーサイド編

出発から6時間経ち、大きな節目がやってきた。利根川への到達だ!

宇都宮駅から利根川までは、約52km。初日と合わせると、約15時間歩いてようやく折り返し地点についたわけだ。まだまだ体も気力もたっぷりある。

魔の利根リバーサイド

「もうこのまま一気に東京着いちゃうんじゃない?」と調子に乗って歩いていたら、利根川沿いの道で鼻をへし折られた

川沿いをしばらく歩くルートを進むのだが、全然先が見えないのだ。スマホの地図で現在地を確認しながら進んでも、いっこうに次の目的地までの距離が縮まらない。利根川恐るべし、さすが日本を代表する大河である。今旅2度目の「血鬼術にかけられてるのか?」ポイントだった。

歩き始めて10時間、体に異変が

1時間半ほどかけて、ようやく「無限利根川編」から脱出した。道中のローソンで買った「鬼殺隊サンド」を食べて、栄養を補給。雨の中歩くと体が冷える分、栄養がダイレクトに熱エネルギーへと変換されているのを実感する。

「炭治郎のレタス、善逸のたまごサラダ、伊之助の焼き豚」商品説明がちょっぴりシュール

16時に差し掛かるころ、埼玉県に突入した。いよいよ東京の隣の県まで来た!

もう東京まで目と鼻の先よ

このあたりで、ふ凡社鈴木の体に、ある変化が起きていた。

「全く疲れを感じない。なぜだ」

2日目に歩いた時間は10時間を超えた。1日目の行程とほぼ同じだけ歩いたことになるが、体に疲れが出ていないのだ。ひたすら歩き続ける中で、体の動きが歩行に最適化されてきたのか、単にアドレナリンで「命の前借り」をしているに過ぎないのか。ちょっと怖い。

セルフィーする余裕すらある

体のどこかに痣が発現していないことを願いつつ、さらに歩みを進める。

東京まであとたったの32km!の罠

日が暮れて18時30分ごろ、とりわけテンションが上がる標識を見つける。

「東京まであと32km!」距離が書かれた表示を見ると、無限に思えた旅路も着実に終わりに向かって進んでいることを感じる。

一方で、心に焦りが生まれたポイントでもあった。32kmは、全力で歩いた初日の歩行距離に等しく、今日中に新宿につくためには、同じ距離を歩かなければならない。当初、土曜日の夜に新宿到着を予定していたが、とうてい間に合いそうにないのだ。残りの工程をリアルに想像できたところで、それまでの疲れが重くのしかかってくるのを感じた。

私は予定を変更し「今日中に都心まで進む」を目標に、残りを歩くことにした。埼玉県大袋駅あたりでの決断だった。都心までの目安となるポイントは、荒川の踏破だ。約20kmの道のりを、約6時間かけてたどりつく計算である。それでもまだ遠いが、からあげクンを食べて元気を出す。

からあげクン焦がしバター醬油味。お肉とバターのコクが筋疲労に直接効く

夜の道は、基本的に閑静な住宅街を進むルート。相変わらず人通りが少なく心細いが、これまでと違うのは「最悪電車に乗れば帰れる」ことだ。いつ心と体が折れても大丈夫!という心理的な安心が支えとなり、体が動く力が湧いてくるから不思議なものだ。

線路のある道に出た時、興奮のあまり雄たけびをあげた(まじで)。

そこからさらに3時間も歩くと足の重さはピークに達し、身体が1分に2年くらい老いてるんじゃないかと思えてくる。

「もう荒川は断念して、最寄り駅の近くで休もう」

諦めかけたその時、暗い夜道の先に、見慣れた青い看板が見えた。

もはや「イノチのほっとステーション」

「ローソン!!!お前って奴は!!!!!」

この無限ハイクの間、「いよいよキツいな」と思った道の先にローソンを見つけることが、不思議なほど多かった。私に強くなれる理由をくれる場所、それがローソンである。

日清「出前一丁」とのコラボ商品「鬼滅一丁」。お箸は持参の公式グッズ

しかも今回のローソンには、イートインスペースがあった。鬼滅コラボの出前一丁で体を温め、足を十分に休めることができたのだ。ありがたや。

ついに荒川

ローソンを後にし、荒川までの残り10kmをひたすら消化していく。22時を過ぎるころには、降りしきっていた雨も止んだ。傘を杖代わりにすることができるようになったので、少し進みやすくなった。

「なぜ体が動いているのか不思議」なほど節々にガタがきているが、腹式呼吸をしながら歩くことだけに集中する。さらに歩いて1時間半、ようやく地図上に荒川を確認できるポイントまできた。

しかし、ここからがまた大変だった。↑の地図で青線がついたあたり(高速道路の高架下)を歩いていたのだが、荒川に向かうなだらかなカーブが、いつまでもいつまでも続くのだ。

地図の上では目と鼻の先にあるのに、荒川の土手がいっこうに見えてこない。3回目の「血鬼術にかけられてるのか?」ポイントだった。

ここまでくると私も意地。ヒイフウ言いながら、ひたすら足を前に出すのみ。約1時間後、ついに荒川土手の階段に到着した

あんなに遠かった荒川がもうそこまで

緊張して足が震える。本当に、この先に荒川があるのか?夢幻ではないか?

荒川きたあああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!

川の向こうに街の灯が見える。ようやく、ようやく「都心」に入ったのだ。感動で泣きそうだった。時刻は10月18日午前1時。2日目のスタートから、19時間後のことである。

セルフで守ったこの笑顔

ここまで来ればもう大丈夫。最後の力を振り絞って王寺駅近くまで歩き、怒涛の2日目が終了した。

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