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こんな船を独り占めしたい

屋形船に乗って隅田川で花火を見ながら酒盛り…最高の飲み会としか言いようがない。

こんなお刺身食べたいし

だが、東京湾を遊覧する屋形船の予約は一年中いっぱい。費用は定番の天ぷら料理+飲み放題で1人1万円からが相場。さらに料理にオプションを付けると2万円越えるのはザラだ。さらに、以前私が屋形船に乗った時、船に乗っていた時間は実質1時間程度。正直、あまりゆっくりできた印象ではなかった。それでもそれなりに楽しかったのだが、

「自分だけでのんびり屋形船に乗ってみてぇ…」

という気持ちになったのだ。好きな酒を積み込んで好きなだけ飲んでみたい!魚も釣ったりしてその場でさばいて刺し身や天ぷらにしたら絶対美味しいやつ!!

そうだ、いっそ自分の屋形船を持ってしまえばいいのでは…? それならもっと自由に海に漕ぎ出せるはず…心の水平線に向かって!

すると、実際に屋形船を出す方法って何だろう、屋形船で商売してる人たちってどうやって開業したんだろう、という素朴な疑問が浮かんできた。そこで、実際に真面目に計算したり、関係各所に聞いてみるということをしてみた。まるで暇な人みたいだが、買い物の前にあれこれ選んでる時間って楽しいじゃないか、そういうことだ。

でも、はじめに言っておこう。

何より先に、宝くじに当たりたい…。

船の種類、大きさと頻度によって出す届け出が異なる

屋形船を出すのに必要なことをざっと挙げてみた。

〜マイ屋形船を持つのに必要なチェックリスト〜

✔小型船舶1級または2級免許の取得

✔各種許可申請

✔船本体を購入

屋形船といえばかなり大型の船だが、ちょっと小ぶりなそれっぽい船で、友人を数人招待して一緒に飲み会ができる程度という設定で考えてみた。

「小型船舶操縦士」の免許を取る

当然、船にも運転免許がいる

船の操縦には免許が必要だ。一般的な屋形船は外洋航海をしないので、一級または二級のいずれかの小型船舶操縦免許を取ればいい。

試験は学科試験・身体検査・実技試験が行われ、各試験種別とも、科目ごとに半分以上の正解、かつ各科目合計問題数の65パーセント以上正解すれば合格だ。

実技試験がある以上、参考書を買って独学で勉強するのは難しく、やはり何らかのスクールを通じて受験したほうが良さそう。ヤマハ発動機のWebサイトによれば、免許の取得にかかる日数は3~4日、費用は11万3000円からとなっていた。

「屋形船で飲み会したいがために免許まで取っちゃいました!」といえば十分ネタになりそう。

船を出すために必要な申請は?

屋形船を出すのに必要な申請については「海の法律家」である海事代理士の橘和幸さん(橘海事事務所)に伺ってみた。海事代理士とは、船舶に関する登録申請など、海に関する手続きを代理、代行してくれる国家資格を持つ人のことで「海の法律家」と言われている。

――個人で屋形船を出してみたいんですけど、屋形船を出す届け出はどこの管轄なんでしょうか?


屋形船ということで、遊覧をする船の扱いは国土交通省になります。釣り船の場合は水産物を扱うので管轄は水産庁になりますが、船から釣りをしないのであれば国土交通省ですね。

――東京湾に船を出す場合、届け出が必要になる条件は何でしょうか。


「屋形船に乗船する人数、そして航路によって違いがあります。旅客定員が13人以上になるかどうかが境目です」

・旅客定員12人以下→『内航不定期航路事業』

・旅客定員13人以上→『旅客不定期航路事業』

――届け出が必要となる条件は何でしょうか?


「年間で何日船を出すのかということと、不特定多数が対象になるのか、定期的な開催なのかということです。不特定多数を乗せて定期的に運行されるのであれば、事業という扱いになります。しかし、年間3日以内で不定期である場合は『旅客不定期航路事業』の許可ではなく『人の運送をする内航不定期航路事業』の届け出で済みます。ちなみに届け出には10万から20万円程度の費用がかかります

――なるほど、たまにちょっと船を出す程度ならそれくらいで済むと。


乗客が知り合いのみで金銭の授受が発生していないこともポイントです。知り合いの知り合いが乗ってお礼にお金を払うと、途端にグレーゾーンになりますね。許可なく礼金を受け取って乗船させると、いわゆる『白タク』行為になります。これは万一事故が発生した時、責任はどこにあるのかという問題にも関わるので、ちょっとくらいいいよね…?という考えはやめたほうがいいでしょう」

つまり「たまに友達と船を出して遊んでも、その時にお金のやり取りが発生してなければ事業の許可を取らなくていいよ」ということだ。

こんな感じのカジュアルな飲み会を開きたいのだが…

ただし「定番のオフ会として毎年同じ時期に開催され、参加者をインターネット上で公募する」というような場合は、たとえ毎年1回の開催で参加費を徴収しなくても事業とみなされるという。線引きが難しい…。法律関係は複雑で「海の法律家」が必要になるのもよくわかる。

ちなみに、大型の屋形船を出してガチで商売をしようとすると「旅客不定期航路事業」の申請が必要となり、海事代理士さんとしてもかなりの大仕事になるという。準備から許可がおりるまで3ヶ月から半年、費用も50万から100万円かかる見込みだそうだ。

『人の運送をする内航不定期航路事業』の届け出にかかる費用が10~20万円かかるようだが、届け出は1回で済む。花見、花火、忘年会と3回船を出せば元が取れそうな気がするぞ!!

「許可のない船が海上保安庁に追い回される」は本当か!?

※あくまで憧れてるイメージです

いろいろ調べているうちにふと、以前乗った屋形船のお兄さんがいい笑顔で放った一言を思い出した。

「毎年花火の時期になると、許可のない一般の船がこのあたりに入り込んできて、海上保安庁の船に追いかけ回されるのを見るのが僕はとっても大好きです」

船を出してると海上保安庁の船に追いかけ回されるってマジなのか!?

真偽を確認すべく、海上保安庁に問い合わせてみた。対応してくれたのは、海上保安部航行安全課の村瀬さん。

――屋形船を東京湾で停泊させたいんですが、許可がないと海上保安庁の巡視船に追い回されるって聞いたんですが本当ですか?


「いえ、航行や停泊に特別な許可は必要ないですし、追い回したりしませんよ。ただ、港湾内には非常に細かな法律があります。おそらく花火を見たい人が停泊するであろうお台場海浜公園の水域は、一般の船の侵入が許可されていないんです。その関係で、水域からのすみやかな退去をお願いしているのを見たのではないでしょうか?

なお、お台場海浜公園の水域はエリアにある水域管理組合の取り決めになりますので、この場合、海浜公園の管理事務局の管轄になります。

どこが進入禁止海域なのかということについては、特に海図は用意していないので、行きたい水域の管理組合などに問い合わせて、入っていいか確認したほうがいいでしょうね」

――海の上って線がないからすぐに迷い込みそうですね…他に航行するときの注意点はありますか?


「東京湾は非常に混雑している水域になります。大型の貨物船から小型の釣り船、プレジャーボートまで大小の船が入り混じっているため、安全にはとにかく留意してください。特に小さな船は、夜間は照明をつけていても夜景と溶け込みやすいんです。事故を起こさないように気をつけて運行してください。視界が悪い場所や急な浅瀬もあるので、海図をよく見て航行してください」

ということだ。

気をつけます!

東京湾に屋形船を出すにはさまざまな配慮が必要

とりあえず、東京湾に船を出すために特別な許可は必要ないということで安心できた。

ところで屋形船の大半は川に桟橋を持っている。そこでいくつか問い合わせてみたところ、流域や水域で組合があるという。

とある組合関係者に、具体的な組合名は出さない条件で質問をさせていただいたところ、こんな答えが返ってきた。

「船が行き来する限界があるから、ある程度、組合ごとに縄張りのような水域はありますよ。我先にいい場所を取り合うと船がぶつかって事故になりますから、そこは譲り合いと話し合いです。新規事業者の加盟を募集していない組合が多いのは、やはり東京湾は水域に対して船の数が多いからでしょう。桟橋にも水面にも限りがありますからね。」

海事代理士の橘さんもこう話していた。


「個人で船を出す場合でも、水域の組合には軽く挨拶をしたほうがお互い気持ち良く航路を使えますから、船を係留しているあたりの組合には話したほうが良いかもしれませんね」

海の上はもう少し自由かと勝手に思っていたが、案外そうもいかないようだ。

→さあて、お次はいよいよ、屋形船本体の値段。さあ買うぞ〜〜〜!(買うとは言ってない)

書いた人
わたぬき

腹回りがゆたかなアラフォーフリーライター。食べ物の気配を感じるとテンションが上がる。

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