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こんにちは。トゥギャッチ編集部の宇内です。

僕はTwitterで平日毎日「本日の地味なハイライト」というものを投稿しています。

こういうやつです。日常のワンシーンを切り取ってバラエティ番組風に紹介しています。平凡な日常を送っているので、「甘いものを食べた」とか「エアコンの温度を上げた」とか、地味すぎる内容が特徴です。

 

いつも撮影はカメラのセルフタイマーで行い、ワイプの中の出演者も変装した自分。Photoshopで2コママンガ風に加工して作っています。「俺はなんでこんなことをしているんだろう」と思いながら。

 

そんな孤独な日課を、かれこれ1年半くらい続けているのですが、日ごろ何気なく眺めていたテレビのテロップやワイプに注目するようになり、

「そもそもワイプって、なんのためにあるの?」

「テレビ番組のテロップもPhotoshopで作ってるの?」

「テロップにフリーフォントを使ったりするの?」

など、いろんな疑問が浮かんできました。

 

というわけで今回は、今年4月で22年目に突入した、TBSテレビの長寿番組「王様のブランチ」の舞台裏に潜入。技術チームにいろいろとお話を聞いてみました!

※この記事はTBSテレビ「王様のブランチ」の提供でお送りします。

 

副調整室(サブ)って何するところなの?

さっそく案内されたのは「サブ」と呼ばれる副調整室。スタジオ内に設けられた、番組制作用の機器の操作や音声、映像等のすべてをコントロールしている操作室だ。

 

「王様のブランチ」が始まった! 室内の空気が引き締まる。

 

正面のモニター前には、TK(タイムキーパー)・ピッチャー・TD(テクニカルディレクター)が座り、それぞれ現場の指揮をとっている。

  • TK…決められた放送時間内に番組が収まるよう時間の進行を管理する
  • ピッチャー…番組全体の進行管理を担当。名称は各スタッフに指示を投げることに由来する
  • TD…カメラや音声、照明などを担当する技術スタッフの責任者。映像を切り替えたりテロップを出したりする

 

正面にはモニターがズラリ。スタジオのカメラが撮っている映像や編集済みのVTR、テロップ、CGなど、さまざまな映像が映し出されている。

 

TL(テロップライン)には、それぞれテロップがセットされていて、オンエアで表示中のTLにはランプがつく。「王様のブランチ」では、TL1をTDが、TL2をピッチャーが切り替えるという具合に、分担が決まっているのだとか。

 

今、スタジオでは出演者がVTRを見ており、出演者の表情をワイプに入れるため、すべてのカメラが出演者の顔を捉えている状態。Cのランプがついているカメラの映像が、ワイプの中に映し出される。

ちなみにCはカメラの略で、カメラの切り替えはTDが担当している。

 


なるほど〜! なんとなく仕組みがわかってきた!

 

TBSのテロップ作りの心臓部「CGルーム」へ!

放送中のスタジオを抜けてやってきたのは、CGルーム。ここでは、TBSの生番組用のテロップやCGをジャンル問わずに作っているそうだ。テロップのセクション、グラフや地図などを作るCGのセクション、天気予報の画面をつくる気象のセクションに分かれている。

ちなみにTBSの場合、画面全体を切り取るものを「CG」と呼び、文字など画面に合成させるものは「テロップ」と呼んでいるそう。「CG」や「テロップ」 などの効果を総称して「スーパー」と覚えておくとわかりやすいかもしれない。

 

テロップは昔、○○で作られていた!?

望月一彦さん

TBS放送センター内にある赤坂グラフィックスアートのテロップ部所属で、テロップ制作歴26年。他局で働いていたこともあり、業界のテロップ事情に詳しい。またフォントにも詳しく、番組で使うフォントへの助言を行うことも。現在は、主に校正部門を担当している。


ざっくり説明すると、ここで原稿を受け取って、テロップを作成し、文字校正する。それをサブや編集ブースに送出するというのが、テロップができるまでの一連の作業の流れです。

TBSの場合は、今どこのサブに何の素材があって、どういう状態なのかを、このCGルームですべて監視しています。

 

これが監視用のモニター。


ほかの局だと、各サブにテロップを送出するための機械が置かれているので、そこでそれぞれ操作してるんですけど。


TBSは、なんでそういう独自のシステムにしたんですか?


TBSの場合は、そもそもこうだったようなんですよね。紙のテロップから電子のテロップに変わった頃に、この部屋でテロップの機材を一元管理するという運用が始まったので、恐らくその流れを踏襲してるんじゃないかと思います。


“紙のテロップ”って何ですか?


昔は「テロップカード」っていうやつを使ってたんですよ。


テロップカード?


はい。昔は、写真のL版サイズくらいの黒い紙に白い文字が書いてあって、それを電気的に映し出す仕組みだったんです。

 

TBSで使用されていたものではないが、こちらが実物のテロップカード。撮影後にネットオークションで落札した。


「テロップホルダー」という専用のプラスチックのケースに、1枚ずつテロップカードを入れていって、それを「オペーク(※1)」という機材に順にセットするんです。オペークの中にあるカメラがテロップカードを撮影すると、黒い背景が透過され、文字が書いてあるところだけがテロップになるんです。
※1 テレビジョン・オペーク・プロジェクターの略称


えーっ! そんなアナログな方法でやってたんですか?


テロップカードの白い文字を黄色くしたいと思ったら、黄色のマーカーで塗ればよかったので、時間がないときはサブで色を塗ったりとか。めちゃくちゃアナログでしたね。


何年前までそんなやり方だったんですか?


TBSの場合は、「ニュースの森(※2)」が始まる少し前辺りからデジタルに移行が始まって、社屋が移転した1994年には完全になくなったと記憶しています。
※2 TBS(JNN)系列で1990年4月2日から2005年3月27日までの間にかけて放送していた夕方の報道番組

 

現在のテロップは音も出る!

そしてこれが現在のテロップシステム! Photoshopじゃなかった。

文字を打ち込むだけでなく、動くテロップや、動きに合わせて効果音が鳴る「音連動」というテロップを作れるらしい。

 

ちなみに、「王様のブランチ」のオープニングで映るこちらのタイトルも音連動。

使えるフォントは、和文が205書体。欧文が49書体。ライセンス契約を結んでいるメーカー以外のフォントは使用しないそう。


フリーフォントは使わないんですか?


テレビ的に使えないんですよ。

フリーフォントは、個人で使う分には無料で使えるんですが、放送で使うとなると、ライセンスを取らなきゃいけません。さらに、同じ番組をネット配信するとか、DVDやブルーレイにして出すとかってあるでしょう?

そうすると、二次使用・三次使用にもそのフォントが使えるように、包括的な契約をする必要があるので、莫大なコストがかかるんです。フリーフォントの場合、そのライセンスが曖昧になりがちなので、基本的に使えないわけです。


フリーフォントと言えど、プロは気軽に使ったらダメってことですね。


ちなみに、「王様のブランチ」では、主にサイドスーパー用(※3)として「サンセリフ」(モリサワ)や「ロゴG」「ロゴ丸」(視覚デザイン研究所)というフォントを使うことが多いですね。
※3 画面の左上や右上に表示される小さなテロップ

 

このプレビュー送出機で、入力したテロップが実際どんなふうに表示されるのかを確認できるようになっている。


これで「地味なハイライト」作ってみたいなぁ…。このシステム、いくらぐらいするんですか?


そうですねぇ。詳しい値段はわかりませんが、4桁はくだらないと思います


えっ、たったの数千円で買えるんですか…?


そんなわけないじゃないですか。

 

テロップ作りのルールはあるの?


僕らは記事を書くときに媒体ごとの表記ルールがあるんですけど、テロップにもそういうルールってありますか?


たとえば、「人名には漢字の新字を使う」「数字は算用数字を使う」とか、細かく決まっていますよ。表記は、『記者ハンドブック』(共同通信社刊)と『NHK漢字表記辞典』(NHK出版刊)なども参考にしつつ、TBS独自のルールを作っています。


じゃあ、TBS全体で禁止されている言葉もあるんですか?


絶対にNGなのが“ら抜き言葉”。しゃべっている言葉に当てるスーパーを「コメントフォロー」っていうんですけど、出演者が“ら抜き”言葉でも、スーパーの文字表記上は「食べられる」「見られる」みたいに、「ら」を補っています。

 

このように、CGルームには表記上の注意事項がたくさん貼ってある。

 

ほかにも、「漢字が並びすぎてわかりづらい場合は、あえてひらがなにする」とか、逆に「ひらがなが連続する場合は、文章にメリハリをつけるために漢字にする。ただし、必ずルビをふる」など、細かいルールがあるそう。

 

テロップはどうやって校正してるの?


実は、TBSでは、テロップを作成しながら校正もできるんですよ。

 

こちらは「メイン」と打ち込んで変換したところ。赤字で注意事項が出てくる。


放送的に使って問題ないかどうかチェックできるように、辞書登録してあるものが表示されているんです。TBSの基準だと、「メーン」という表記はダメで、「メイン」を使えってことですね。

 

こちらが校正専門のセクション。


ここで、作ったテロップの内容をすべてチェックしています。辞書に登録してある単語は、入力画面の文字背景が緑色になって、説明が出ます。正しいものは緑、間違っているものは赤。ここで最終チェックをしてからオンエアにのせる、と。


校正していて、ダメだなと思うテロップってありますか?


文字数が多すぎるテロップですね。コメントフォローに多いんですが、しゃべっている言葉をなんとか一画面に収めようとして、文字が多くなってしまう。

 

つまり、こういうこと!


文字って基本、正方形なんですよね。正体(せいたい)っていうんですけど。正体が100%で、これを横につぶしたものを長体(ちょうたい)、縦に平べったくしたやつを平体(ひらたい)っていうんですけど。

 


読みやすさを考えると、長体や平体って元の文字幅の80%が限界なんですよ。ところが、文字数が多すぎて、幅が70%とか60%になっちゃうときがある。そうすると、もう全然読めなくなります。

基本的に僕らは、番組スタッフの指示通りにテロップを作っていますが、そういうときはスーパーを2枚に分けたり、文字を削ってもらったりします。

 

たしかに、60%となるとかなり読みづらい。

 

ちょっとのミスで放送事故になることも…


校正が終わったら、サブにある機械へ送られるんですよね?


はい、送出管理端末という機材ですね。「チョット」とか「チョット端末」っていう愛称があるんですけど。

 

こちらがチョット端末。


なんで「チョット」なんですか?

 


今のは…。


いや、ダジャレではなく、名前の由来は本当にわからないんですよ。

チョット端末上でスーパーを選択すると、次に使う素材がスタンバイされるようになっています。選んだスーパーを即座にオンエア画面へ反映する設定にもできるんですが、誤って触ってしまうと、無関係なスーパーが表示されてしまうリスクがあるので。


それって、いわゆる放送事故ですか?


そうです。ちょっと扱いを間違えると放送事故になりかねない。結構シビアな現場なんですよ。生放送の場合は特に。

 

ちょっと間違えると、こういうことになる。


明らかに間違いだとわかる場合は、すぐ画面から外します。ただ、政治家の名前とか、その場では気づけないことも…。センシティブな内容での誤報は、番組内で訂正とお詫びをするケースもあります。


おぉ…生放送って、怖い世界なんですね。

 

サブにあった貼り紙。「ミスゼロ!!」の文字が力強い。

 

「王様のブランチ」のスタジオに潜入!

「王様のブランチ」は、大きく分けて午前と午後の2部構成。9時30分~11時45分の第1部の終了から第2部が始まる11時59分までの間は「JNNニュース」が放送されている。

 

「JNNニュース」放送中、出演者がはけたタイミングを見計らって、スタジオの見学にやってきた。

 

つい先ほどまでメインパーソナリティーのアンジャッシュ渡部建さんが座っていた席に座る。これが、渡部さんの尻の温もり…。

 

こちらがフロアモニター。出演者はこのモニターでVTRを確認し、その表情をワイプで抜かれている。

 

メインMCになりきってみたが、一般男性にしか見えない。肌着みたいな服が悪いのか…?

 

記念に、VTRを見ている風の姿も撮ってもらった。やっぱり一般男性だ。

 

サブも一般男性だらけ。

ちなみに、冒頭で紹介した「本日の地味なハイライト」のワイプは、100円ショップで買ったキラキラの折り紙を背景にしてスタジオっぽさを出しているのだが、

 

改めて見ると、全然スタジオっぽくない。

 

ワイプを切り替えるタイミングはどう決めてるの?

大蔵聡さん

テレビ番組専門の制作プロダクション東通の担当課長で、技術責任者であるTDを担当。「王様のブランチ」はスタート当初、アシスタント時代から手がけている。ほかにも「サンデー・ジャポン」「爆報!THEフライデー」「ゴロウ・デラックス」などを担当している。


ワイプを操ってるのはTDなんですよね?


そうです。試しに入れてみましょうか。スタジオにいる宇内さんの画面に、宇内さんのワイプを入れるとこうなります。

 


へぇ~、右手でワイプを出したり消したりして、左手で出演者を切り替えてるんですね。タイミングはどうやって決めてるんですか?


「王様のブランチ」の場合は、僕がですね…

 


好きにできるんだ…。


はい。ゲストに広瀬すずちゃんが来てたら、かわいいし、ずっと表示させておきます。


大蔵さんの好みがモロに反映されるんですね。


広瀬すずちゃんが来ていない場合は、特定の出演者に偏らないように、なるべく平均値を取るように配慮してますけどね。

 

こちらは取材後に調べたワイプ登場回数のランキング。結構偏っていた。

 

ワイプで抜きたい顔、そうでない顔


「ここはワイプで抜こう!」と思う瞬間ってありますか?


リアクションが大きい人やVTRを食い入るように見ている人、VTRの内容にピッタリのリアクションをする人を抜くようにしています。

みんな同時にいい顔してるときは、すごい速さでワイプを切り替えながら全員抜くとか、2回ずつ映すこともあります。


ブランチの出演者で、リアクションが薄い人はいますか?

 


即答ありがとうございます。モザイクかけておきますね。

リアクションが薄い以外に、ワイプで抜かないケースはありますか?


司会者が下を向いて進行表を確認しているとき。あとは、せきとかくしゃみをしている人は避けます。生放送は、後でカットできないですからね。


なるほど。さっきスタジオを見学してきたんですけど、出演者の席の手前には、放送の状態を確認するためのモニターがありますよね。ってことは、ワイプで抜かれたら本人はわかるんですよね?


そうですね。自分の顔が抜かれたら、表情を作ってくれる出演者もいます。


視聴者としては、ちょっとわざとらしく感じちゃうやつですよね。あと、撮られてるカメラを特定して、カメラ目線でウインクする人とか。


でも実は、それがワイプの本来の役目でもあるんです。


えっ、どういうことですか?


ワイプには「VTR中も出演者のみなさんに仕事をしてもらう」という役目もあるんですよ。なので、何もリアクションしない人をあえて抜いて「顔で仕事してください!」と促すこともあります。

出演者の方もそれで気づくこともあるのか、料理のVTRを見て「おいしそ~」とか言い始めますね。

 

どうしてワイプを使うようになったの?


ワイプってそもそも、そういう目的で生まれたものなんですか?

 


うーん、どうなんでしょうね。ギャラの高いタレントさんが出ているのに、VTR中は全然顔が出なくて「割に合わない」と思った制作の人間がワイプという仕組みを編み出した…なんて話も聞きますけど。


ワイプで元を取ろうってことですね。

ところで、ワイプを操る仕事をしている大蔵さんに、こんなこと聞くのもアレなんですが…


何でしょう?


ワイプって、必要ですか?

 


というのも、ワイプって賛否両論あると思うんですよね。「いらない」って人もいれば、「好きなタレントがワイプに出るとうれしいから必要だ」という人もいて。大蔵さんはどう思いますか?


ワイプが流行りだした頃、当時カメラマンだった僕の周りでは「ワイプなんて邪魔なだけ」って言われてましたね。


えっ! そうなんですか!?


でも、ワイプって結構使えるんですよ。

たとえば、横澤夏子さんが出ているVTRが流れているとするじゃないですか。本来、VTRに出ている本人はワイプに入れないんですが、横澤さんがVTR中で変なボケをかましたら、それを見て照れている本人の顔をあえてワイプで抜く。

そういう演出にも使えるので、ワイプはあったほうがいいんじゃないかな、と。今はそう思っています。


ワイプの使い方次第で、演出の幅が広がるってことですね!


ワイプはあったほうがいいですよ。僕もワイプを切り替えてると眠くならないですし。


あっ! 本音が出た!

 

さて、いかがだったでしょうか? 普段はあまり注目されることのないテロップやワイプ。どうやって作られているのか、その裏側がおわかりいただけたかと思います。

「この女の子はよく映るから、TDに好かれてるのかな」とか、逆に「この人はあまり映らないからTDに嫌われてるのかな」などと、いろいろ邪推しながらテレビを見るのも1つの楽しみ方なのかもしれません!

 

画像提供:TBSテレビ

というわけで、たくさんのスタッフさんの技術を結集して作られている「王様のブランチ」は、毎週土曜日9時30分~14時に放送中(一部地域を除く)です。

 

画像提供:TBSテレビ

最新のエンタメ情報から話題のスポット・映画・グルメ、さらにはさらには旬なゲストが登場するロケコーナーやTBSで注目の番組情報など、盛りだくさん! 4時間半の生放送でお届けしています。土曜日はぜひチャンネルをTBSに合わせて、チェックしてみてください!!!

 

(おしまい)

執筆:宇内一童(ノオト)/編集:中道薫(ノオト)/企画・制作:有限会社ノオト

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